TOP ≫ CATEGORY ≫ 懐かしドラマ映画
CATEGORY ≫ 懐かしドラマ映画

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comments (-)Trackbacks (-) | スポンサー広告

「レッド・オクトーバーを追え!」1990年アメリカ製作

予定調和な映画はお好きですか?
ワタクシはけっこう好きです、よく出来てさえいれば!ホイホイと話に乗って、時には騙されます。お調子者なので!

「レッド・オクトーバーを追え!」はよく出来た予定調和な映画です。
ワタクシはたいへん好きです、よく出来ているので!

映画の冒頭でショーン・コネリー演じるマルコ・ラミウス艦長はロシア語でしゃべっています。


思わず喜ぶワタクシ。
「ええのう、ええのう。やっぱロシアの人はロシア語でしゃべっておくれやす。」

ムルマンスクを出航する新型潜水艦、レッド・オクトーバー(クラスヌイ・オクチャブリ、内部デザインがすばらしい!)
テーマ曲の男声合唱にゾクゾクしつつ、
コネリーのロシア語を堪能しようとワクワクしていたワタクシ、
あれっと気がつくと、彼は英語でしゃべっておりました。
・・・・・・
「ラストエンペラー」冒頭の「Open the door!!」以来のがっかりです。
気を取り直して、米露の潜水艦合戦を堪能することにしました。

ラミウス艦長と腹心の部下達はアメリカに亡命しようとしています。
最新のキャタピラーシステムでソナー探知をすり抜けるレッド・オクトーバーなら、
簡単にアメリカを核ミサイルで攻撃できると知った彼は
潜水艦ごと亡命する決心をしたのでした。
そのために同乗している政治士官の首をちょいと捻って謀殺することから始まる航海。
これは(観る側は)楽しめそうです。

そんなレッド・オクトーバーを追尾するアメリカ海軍の攻撃型潜水艦ダラス。
渋いマンキューソ艦長(↓左側)と
沈黙潜水艦レッド・オクトーバーをキャッチするほどの凄腕ソナー技術師ジョーンズ(↓中央)が乗っています。
re1.jpg

そして、海の男達の現場に乗り込むことになったCIAの分析官ジャック・ライアン(演じるはアレック・ボールドウィン)
re2.jpg

ソ連の主要潜水艦全てが大西洋に出てきた状況から、ライアンだけがラミウスの亡命を見抜きます。
直接ラミウスに会って真意を確かめるよう要請され、ロンドンから飛んで来たばかりなのに、
今度はワシントンから大西洋上の空母エンタープライズ号へ軍用ヘリで飛ばされ、さらに潜水艦ダラスへとダイブするはめに。
re3.jpg
ジャック・ライアン、完全に人道的正義の体現者。

この辺の駆け引きも面白いのですが、それ以上にすごいのが、ラミウスの航行術。
ソナー音を頼りに海底山脈の谷間で魚雷をかわすシーンは手に汗握ります。


「潜水艦、スゴイッッ!!」(いや、スゴイのはラミウス艦長)
お調子者のワタクシ、すっかり潜水艦に心酔していましたが、
ソ連の悪役潜水艦長ツポレフが部下の命など顧みず、ムチャ振りをしだすと「潜水艦、コワイッッ!!」
さすがお調子者は変わり身が早い。

ダラスに乗り込んだライアンはついにラミウスとたった一度のコンタクトで、彼の真意を確かめることに成功。
さらにマンキューソとジョーンズが同行して、レッド・オクトーバーに乗り込み、
ロシア人とアメリカ人の御対面となります。
お調子者のワタクシ、上手いこと運んだ予定調和にすっかり感動して
「ええのう、ええのう」と嬉しがってしまいました。
が!
艦内破壊工作員と悪役ツポレフの二重攻撃で、感動はあっという間に吹き飛びます。

ここからが米露のベテラン艦長の連携真骨頂&ライアンの汗まみれ放射能漏れ阻止作戦。


可哀そうなのはツポレフ指揮下の船員達ですね。

そして、かっちりとアメリカ主導の予定調和で終わりますが、そこはエンタメ。文句は言いますまい。
いやぁ、楽しかった!

それにしても、ショーン・コネリー!
re4.jpg
re5.jpg

「ええのう、ええのう!」
お調子者はすっかりラミウス艦長にのぼせてしまいます。だって、かっこいい~!!
かっこいいと言えば、マンキューソ艦長も渋かっこいい!
超脇役の海軍ヘリのパイロットとか、
ラミウス配下の機関室長とか、現場の男達がプロの顔しているのが、たまりません。

この映画、女っ気がほとんどなくて、ライアンの妻と娘がほんの一分ほど登場するだけで
あとは男の世界です。

ただ、いまだに疑問なのは、潜水艦が急浮上してる時、乗組員はどうなっているのかということです。
例↓(効果音・ずばあああぁぁぁぁ~~)
re6.jpg

レッド・オクトーバーを追え!  スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]レッド・オクトーバーを追え! スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]
(2012/09/14)
ショーン・コネリー、アレック・ボールドウィン 他

商品詳細を見る

レッド・オクトーバーを追え (上) (文春文庫 (275‐51))レッド・オクトーバーを追え (上) (文春文庫 (275‐51))
(1985/12)
トム・クランシー

商品詳細を見る


今回のプラスワン

この映画、神戸市阪急三宮駅に隣接の映画館で観ました。1990年7月20日、海の記念日でした。
神戸阪急ビル東館にあった3つの映画館のどれかです。
ビルの2階を阪急電車神戸線が貫通している構造だったせいか↓
re7.jpg

上映中に電車が通過する音が時たま聞こえてきました。
ソナー技術者のジョーンズ君だと「気のせいか…電車の音が。」と報告しそうなところですね。

神戸阪急ビル東館は阪神淡路大震災のため、取り壊されました。
平成元年から平成4年まで神戸市民だった時に、もっと神戸市を歩いておけば良かったと少し残念に思います。
神戸淡路自動車道が開通しても、なかなか神戸を訪れることができません。

ところで、ワタクシ、閉所恐怖症です。たとえばMRIには入れません。
初めて入った時には泣きそうな声で「出して下さい」と頼みました。

そういうわけで潜水艦も乗れそうにありません。
実際に乗るチャンスはないでしょうけど、狭い潜水艇などではパニックを起こすかもしれません。
レッド・オクトーバーやダラスはかなり大きいので、それほどの圧迫感はありませんが、
やはり廊下の幅を見ると
「こりゃあ、無理かも。」と思ってしまいます。

(元記事は2013年6月15日に書かれました・エントリー716)

「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」1997年公開ドイツ製作

全然予備知識なしで観ました。
「ビンゴォォォォーーーーッッッ!」

ああ、これだから欧州映画の発掘はやめられない。これはマジでお薦め!
日本語&ドイツ版予告編


まず脚本がいい!
冒頭で二人の男が一つのジョークをめぐって、他愛なくも真剣な話をしている。
「医者が患者のタマ(この言葉一つで片方の男がドイツ語にやや不自由な異邦人と分かる)を見て言った。
『信じられないもので出来ている、木と金属だ。子供はいるのか。』
患者は答えた。
『二人だ。一人はピノキオで、一人はターミネーターだ。』」
ピノキオを知らない異邦人は当然笑えない。
ジョーク一つで喧嘩になる男達。
彼らはベルギー人とアラブ人で、たいへんお間抜けなギャングなのだ。

次にテンポがいい!
さくさく切り替わる気持ちいいカメラワーク。
コメディで
ロードムービーで
クライムムービーでもありながら
死生観をさらっと盛り込む映像はドイツ映画独特の生活感(生々しさ)を忘れない。

さらに音楽がいい!
映画のタイトルどおりボブ・ディランの「Knockin' on heaven's door」のカバーを始め、
懐かしい洋楽とゴキゲンなナンバーが目白押し。

全く違うタイプの二人の青年、ルディ(↓左)とマーチン(↓右)。
no1.jpg

病院の病室で出会った彼らの共通点は「余命数日ないし数週間」
タバコを吸い続けるマーチン、死んだように眠るルディ、
no2.jpg

死について語り合ったかと思えば
no3.jpg

偶然見つけたテキーラを飲むために病院の調理場で塩とレモンを漁って完璧な酔っ払いの出来上がり。
ルディがまだ海を見たことがないと言えば
天国の流行りは海について語ることだと返すマーチン。
二人はパジャマのまま、かっこいいベンツを盗んで病院から逃走するが、
そのベンツはギャングが大金の運搬用に用意したもの。運転手は冒頭のお間抜け二人組。
no4.jpg

小生意気な悪ガキを軽くはねて病院に寄ったところだった!
no5.jpg

ここから始まる、てんやわんやなロードムービー。
残された時間がわずかなら、せめて望みをかなえよう!怖いものはなにもない。
海に向かってひた走る車は次々と盗んだものばかり、
銀行強盗はするわ、車のトランクの百万マルクは豪勢に使うわ(一泊50万円しそうなスイートルーム)
no6.jpg

警察には追われるわ(追ってきた警官&婦警の服を奪ったらこうなってた)
no7.jpg

ギャングには追われるわ(誰も死なない銃撃戦)
no8.jpg

善良なおっさんを善良に騙すわ(善良なおっさんだけに激しく騙される)
トルコカフェに立てこもるわ(トルコ人のおっさん達、まったく動ぜず)
ドイツ全土にTV中継されるわ(女性キャスターも、婦警も、看護婦も、たいへんナイスバディ)
no9.jpg

で、たいへん楽しい。

だが、確実に天国のドアを叩く時が近づいてくる。何度も発作を起こすマーチン。薬を飲ませるルディ。
雲の端に腰かけて海の美しさを語るための準備をする。

ちょっとしたドンでん返し的な展開もあって(この数分のためにだけルトガー・ハウアーが出演!)
no10.jpg

ついにオランダの海にたどり着く二人。
no11.jpg

本当にいい映画です。

トドメに俳優陣がいい!
日本で知られているのは、マーチン役ティル・シュバイガー、ルトガー・ハウアー、モーリッツ・ブライプトロイくらいかな。
ルディ役のヤン・ヨーゼフ・リーファースはベルリン在住の俳優&ミュージシャン。
ドイツ映画界の中堅の一人。
ギャングの一人、ティエリー・ファン・ヴェルフェーケ(↓大きい方。小さい方がモーリッツ・ブライプトロイ。)
no12.jpg

美しい店員、クリスティーヌ・ポール
no13.jpg

強面の警官、ハンネス・ヤニック
no14.jpg

風俗業のマネージャー、 ケンセ・ヴォルマン
医師、ハーク・ボーム
マーチンの苦労人な母、 コーネリア・フローベス
風俗業の店主、 フープ・シュターベル
綺麗で厳しい看護婦 コリンナ・ハルフォーフ
中古車販売店主 ウィリアム・ソムツキク
などなど、キャラが際立っています。
それもそのはずで、彼らの何人かは映画監督やフィルム編集者や脚本家、はたまた実業界の人で、ドイツ映画界を支えている人達です。

彼らの名があまり知られていないのは、まだまだ欧州が遠い(心理的にも距離的にも)証拠でしょう。
この先もドイツ映画の隠れた秀作と出会いたいものです。

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア [Blu-ray]ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア [Blu-ray]
(2011/03/18)
ティル・シュヴァイガー、ヤン・ヨーゼフ・リーファース 他

商品詳細を見る


今回のプラスワン

「Knockin' on heaven's door movie」で画像検索をかけると
「カウボーイビバップ 天国の扉」(2001年)の画像も果てしなくヒット!
no15.jpg

COWBOY BEBOP 天国の扉 [Blu-ray]COWBOY BEBOP 天国の扉 [Blu-ray]
()
不明

商品詳細を見る

なんとも懐かしい!

ちょっとマジメな話をしましょう。
天国はあるでしょうか。地獄はあるでしょうか。
もっと言えば
彼岸はあるでしょうか。浄土はあるでしょうか。

これは宗教というより信心の範囲で語りたいのです。

ワタクシの家は真言宗ですが、夫が浄土真宗で、義父は住職を務めていました。
結婚する時、義父は「信心は自由であるから」と仰り、
夫の信仰をあるがままにしてほしいと、願っていました。
それで、ワタクシの母が「家に二つの仏壇があるのはいけない」と言うたびに防波堤となって
夫の仏壇を守ってきました。

同じ仏教でも宗派が違えば、もうこれですから、いっそ無宗教がラクかもしれません。

しかし、時に人生はつらく哀しい。試練と悩み事の連続だったりします。
そんな時、神仏にすがったり知恵を求めたりするのが人間です。
たんに御利益を得ようというのではありません。
迷いの渦中から自身を取り戻し、前進の一歩を踏み出すために求めるのです。

母は真言宗というよりは迷信によって育ったのかもしれません。
「悪いことをすると地獄に落ちる」とは父方の祖母の口癖でした。
半世紀生きると、ワタクシは自分がかなり悪党の素質で出来ていると思わずにはいられません。
嘘つきSF小説を書いているのですから、上の世代の人の弁だと地獄行きは決定しているようなものです。

かまいません、地獄などありません。少なくともワタクシのイメージに地獄はないのです。
夫と付き合って20余年、
親鸞のいう「いわんや、悪人をや」の言うところを少しなりとも考えてきました。
解釈の仕方が未だに分かれるほど深いものですが、
阿弥陀仏が救おうとするのなら、せめて完全でない自分を受け入れて浄土のイメージとともに頑張ろうと応える。
現代の信心(あるいは発心)はこういうのもいいのではないかと。

かわりに夫が般若心経を詠むようになり、彼も心を落ち着けるために、求めるものがあるのだなと感じるここ数年です。
というか、仏壇に関しては、もう夫にまかせました。
「真言宗も真宗も、もとは同じだから」と寛容に言うので。はい。

(元記事は2013年6月10日に書かれました・エントリー715)

「髪結いの亭主」1990年フランス製作

この映画の髪結い・マチルドは女神。
ka1.jpg

そして髪結いの亭主・アントワーヌは女神と共に、神殿である理髪店で暮らす男。
ka2.png
それだけなのだ。

アントワーヌは幼い頃、最初の女神に会ってしまった。
理髪店のシェファー夫人だ。
k4.jpg
彼女の手で髪を整えられ、彼女の胸を盗み見、彼女の香りを味わい、女神に恋をした。
彼は結婚するなら髪結いの女と決心する。
 
そのアントワーヌもすでに中年のおっさんになっていた。
が、女神が降臨する。
マチルドである(脚)↓
k2-1.jpg

彼はマチルドに整髪してもらい、その場でプロポーズし、わずか3週間後に承諾される。
双方の家族が新郎の兄だけだったか。あとは常連客だけの結婚式。
ka5.jpg
幸せな二人。

かくして神話は始まった。
新婚旅行もそこそこに二人はマチルドの仕事場である理髪店に引きこもって暮らす。
そりゃあ、
女神のいる神殿でいつも女神の隣にいて女神を眺めていたいだろう。
ka6.jpg
k3.jpg
至福であるぞ、アントワーヌ。

しかも眺めるだけでない。
女神を愛撫し、女神と抱き合う。理髪店は官能の神殿でもあるのだ。
客が居ようがいまいが、関係ない。なぜなら、そこは神聖な場所だったから。

アントワーヌの最初の女神は、薬の飲み過ぎで突然死した。
k2.jpg

そこで観客はハタ!と気付く。
アントワーヌの女神はいつまで人の世にいられるだろうか。
古今東西にあるように
女神と人間のあいだには見えない別離の掟があるのだ。
それはマチルドにとっても避けて通れないものだ。
彼女は女神以外の何者にもなれない。
アントワーヌの子を孕んで母親に変身することもない。
何より人間の身では永遠の女神であり続けるのは難しい。
女神は去らねばならない。

ある夕立の日にマチルドは増水した川に身を投げて去る。

アントワーヌは神殿でただ一人待っている。
女神が戻ってくるのを待っているのだ。

現実のようでいて、現実にはなさそうな話であるところがミソな映画だった。
マチルドがとにかく現実離れした存在だ。過去の一切が謎だ。
アントワーヌのプロポーズを即諾するのは、まるで女神がそれを待っていたかのようにさえ見える。

そしてアントワーヌも現実離れした存在だ。子供の頃の恋がずっと続いている。
その恋に忠実だ。
彼の人生は女神に捧げられている。
それは虚しいものでなく、彼を支えているものだ。
神殿男は神殿の司祭でもある。彼は踊る。
Le mari de la coiffeuse. Jean Rochefort dances...


おそらく彼は女神を待ちながら、神殿で踊り続けるのだろう。
個人的にはたいへん好きな映画だ。


今回のプラスワン

小学生の数年間は山奥で暮らした。
理容店の一つくらいはあって
父親について行って漫画を読みふけるのが楽しみだった。
とうぜん少年漫画誌しかない。
そこで「富士山爆発!灰に埋まった東京タワー」とか
「トイレの歴史・紙のかわりに使っていたもの」とか
少女漫画誌ではけっしてお目にかかれない読み物に出会った。SF的な世界だった。

自転車免許を小学校が発行してくれると、自分で散髪に行かされた。
当時、地元にはたくさん理容店があった。
ほんわかしたおじいちゃんの店によく行ったが、ある日、妹がオソロシイ目にあった。
おじいちゃんはラジオで落語を聴くのが楽しみだったらしい。
だが、あまりに落語がおかしかったらしく、
仕上げの剃刀を持った手がふるふると震えている。
ずっと震えている。
妹は早く落語が終わるのを
心で冷や汗掻きながら待っていたそうだ。

子供が幼かった頃、たまたま寄った理容店で
連載中の「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」を読んでしまい、
爆笑するわけにもいかず
雑誌に突っ伏して肩を震わせたことがあった。不審な親を演じてしまった。

最近では夫の行きつけの理容店が腕がいいというので
末っ子を連れて行ったら
店主さんが某オミズ系タレントにそっくりで、喋り方もそのままだった。

理容店は何が待っているか分からない。あなどってはいけないのだ。

(元記事は2013年4月29日に書かれました・エントリー709)

「恐るべき子供たち」1950年フランス製作

高校時代、萩尾望都ファンだったワタクシは彼女の描いた「恐るべき子供たち」に衝撃を受けた一人でした。
「何じゃー!この物語は何じゃー!だーれが殺したクック・ロービンッ!あ、そーれ♪」
早速ジャン・コクトーの原作を読み、
「何じゃー!この物語は何じゃー!コクトー、狂っとるんちゃうかー!ぱらら~ん♪ぱらりららんら~ん(バッハ、トッカータとフーガで)」
と、まぁ、しばしの間、一人狂騒状態を呈したものでした。

原題「LES ENFANTS TERRIBLES」


フランスの詩人ジャン・コクトーが1929年に書いた小説をジャン=ピエール・メルヴィル監督が映画化。
(なんでも麻薬中毒治療中に書いたとか、伝説には事欠かないコクトー)
コクトーは映画の脚本やナレーションを始め、スタッフの一人としてかなり現場に混乱をもたらしたらしい。
その爪痕というか痕跡は詩人らしいイマジネーションと狂気となって
フィルムの端々に見て取れるが
芸術映画に慣れていないワタクシのような凡人には(あるいは子供)には忍耐と刃を当てられるような感覚があった。

劇場で見たのは18歳の時、関東圏に住んでいた頃、新聞で上映を知って
JR有楽町駅に近い古い映画館へ見に行った。
同時上映が「暗殺の森」だったと思う。

パリの一隅で大人になることを拒む姉弟、エリザベートとポール。
中学生のポールはガキ大将ダルジュロスを慕っているが、彼が投げた石入りの雪玉に当たり気絶。
もともと病気があったらしい。
医者に学校に行くなと言われてダルジュロスに会えなくなるのを嘆くポール。
oso1.png

慰めるエリザベートはずっと二人で部屋にいて、幻想の世界へ行けることを喜ぶが、
oso3.jpg

姉弟には病気の母が居て、貧乏で、幼かった頃のように自由に幻想世界に浸ることが出来ない。
ポールの友のジェラールさえ
最初は二人の部屋に入ったことをエリザベートに怒られるほど、この姉弟は姉によって支配されている。
oso2.jpg

だが、ちょっと待て。
このオッサンな中学生は何だ。
中学生と呼ぶには成長しすぎたポール(正面向いてる方)↓に半端ない違和感を覚えるワタクシ。
oso4.jpg

ちょっと待て。これは拷問、ほとんど拷問じゃないか。耐えるしかないのか!

…耐えました。耐えること60分を過ぎれば
ようやくそれなりの歳になってオッサンのポールに見慣れた頃には
姉弟の幻想世界がすっかり色あせ、残り30分、別の痛みがひしひしと押し寄せる。

しかも、コクトー自身が務めるナレーションが重いし、硬いし、イッテいる!
なんだよ、この演劇!悲劇っぷりは!
自分に酔ってるのか、コクトー!
そうだろ、そうだと言え!コクトー!

ジェラールの金持ち伯父さんの招待で、海辺へ向かう列車のシーンで
エリザベートの精神の咆哮をわざわざ映像化したのは監督メルヴィルなのか
それともコクトーの差し金か。
ワタクシ、ここだけはどーしても分かりません。
何をどうやったら線路上にエリザベートの吠える顔が重なるのか、
このセンスをどう受け止めればいいのか。

さて究極のひきこもり姉弟の前にダルジュロスそっくりの娘アガートが現れ、
oso5.jpg

ポールの恋の病は重症化。
なんたって子供のままですから、少年は残酷です。
アガートを苛めるポール。
ところが、アガートもどうしたことか、ポールに恋煩い。
エリザベートは結婚したのに、すぐ相手が事故死して処女のまま。
彼女にとっては結婚など、子供の遊びのようなもので、
関心はあいかわらずポールに向いている。
そしてポールはアホなので、アガートに差出人も受取人も自分の名前を書いた恋文を出す。
(このへんはちょっと分かるよ、ポール)

ここでエリザベートは憤怒の大魔神化しポールとアガートを騙して、アガートとジェラールを結婚させる。
oso6.jpg

いずれ訪れる悲劇の予感は唐突に現実になります。
懐かしいダルジュロスからの贈り物、それは毒薬。どうやらダルジュロスも少年の心を忘れていないようです。
毒と子供時代の甘く危険な誘惑…。

本格的な悲劇の前にエリザベートの夢のシーンがくっきりと美しい。
混沌とした子供部屋とは違い、静謐な美しさ。
姉弟二人だけのもう一つの世界。
oso8.jpg
oso9.jpg

ここでのナレーションにゾクゾクします。
見事に映画と詩が一致しています。
(しかし、なぜナレーションにタイプライターの音がかぶるのか謎。ポールが死んでるから機械的にしゃべるってこと?
分からん、分からんぞ、コクトー!)

彼らにとって、生も死も富も貧乏もたいした問題ではないのです。
oso10.jpg

この現実の世界とは違う、彼らだけの幻想の世界に生きられるかどうか、それこそが大問題。
ポールはダルジュロスの毒薬によって、幻想へと旅立ち、
エリザベートはそれを受け入れられずに拳銃で自分を撃ちます。
かつて「自殺は罪だ」と書いた鏡の前で。

映画に使われたバッハの「4台のハープシコードのための協奏曲イ短調」
J S Bach 4 Harpsichords Concerto BWV 1065


恐るべき子供たち《IVC BEST SELECTION》 [DVD]恐るべき子供たち《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
(2013/02/22)
ニコル・ステファーヌ、エドゥアール・デルミット 他

商品詳細を見る


恐るべき子どもたち (小学館文庫)恐るべき子どもたち (小学館文庫)
(1997/04)
萩尾 望都

商品詳細を見る


恐るべき子供たち (光文社古典新訳文庫)恐るべき子供たち (光文社古典新訳文庫)
(2007/02/08)
コクトー

商品詳細を見る


恐るべき子供たち (岩波文庫)恐るべき子供たち (岩波文庫)
(1957/08/06)
コクトー

商品詳細を見る


今回のプラスワン

高校時代に読んだ「恐るべき子供たち」は岩波文庫(当時は生成り色の本体に赤い帯のヤツ)訳は鈴木力衛。
コクトーの文脈はたいへん読みつらくて
「ちくしょう、これが詩人か!」と少々イラついたのは事実です。
正直、漢文の方がマシでした。

近年、古典新訳ブーム(?)のおりに光文社から出たのをちら見しましたが、
最初の印象とは恐ろしいもので、
インプリンティングの力を舐めてもらっては困るとばかり
岩波文庫の文章が脳みそにがっちり食い込んでいるのを感じました。オーマイガッ!

さいわい、ここ2~3年で物忘れが本格的になって
インプリンティングの力は弱まっているようです。
「なるほど、人生50歳から再起動か。」などと都合のいい解釈をして
新しい境地で新訳に挑める日がきたようです。

ただし書店に着いた時点で、新訳文庫のことは忘れているに違いありません。
やっぱりコクトーは苦行です!

(元記事は2013年4月2日に書かれました)

「オルランド」1992年公開英・露・伊・仏・オランダ合作

男と女の間には~、深くて長い溝がある~~♪

この物語の主人公オルランドは最終的にこの溝を越えた存在になった。
ol1.jpg

予告編


最初あまり期待せずに観ましたら、ファンタジックでおもしろかった。
(以下、堂々とネタバレ)



第一章「死」(1600年)では老いた女王エリザベスに祝福されたのか呪われたのか
ol2.jpg
貴公子オルランドは女王から屋敷をもらい、不老不死になってしまう。

第二章「愛」(1610年)父の死により爵位を継いで結婚するはずなのに、あっさりロシア皇女と恋に落ちるオルランド。
ol3.jpg

彼はいまだに世間知らずで恋の喜びに満ちたかと思うと喜びが去る悲しみに捕らわれるお坊ちゃま。
婚約者が去り、駆け落ちを持ちかけたロシア皇女はもちろん彼の話に応じなかった。
オルランドは「女は信用できない。」と悟ったようにつぶやくが、
失恋の痛手による強がりのようでもある。

数日眠り続けて目覚めると第三章「詩」(1650年)
ol4.jpg

彼は詩作を始める。時の詩人グリーンに自作の詩をバッサリ切られて落胆するが、
グリーンは貴族嫌いゆえに酷評したのだった。
それでもオルランドが彼に年金支給を約束するあたりはさすが貴族の誉れである。

第四章「政治」(1700年)約一世紀かけて、ようやく彼は世間にでる。いきなりインドに派遣され外交大使を務める。
そこで現地の王族の青年と友情を交わすものの、現実は厳しい。
ol5.jpg

王族と敵対する別の王族との戦争で、彼は任地を失い、友情も失う。

ついに一週間も眠り続けるオルランド、目が覚めたら女性になっていました!
オルランドは大物です。
「性が変わっただけ、同じ人間」とのたまい、ドレスを着用。
ol0.jpg

しかし、女になって見た現実はこれまた厳しい。
第五章「社会」(1750年)で、ドレス姿のオルランドは男達の「女は男より劣った存在」という偏見に晒される。
「結婚によってのみ女は夫から価値を与えられる」というハリー大臣に言い寄られるオルランド。
ol8.jpg

案の定、彼女はハリーを袖にする。
怒ったハリーは「女に相続権はない」として、屋敷を出るよう訴訟を起こす。

次の一世紀に何があったのか。
オルランドはどうやら必死で相続権をめぐる訴訟と戦っていたらしい。
男の論理に翻弄される姿が、狭い垣根を迷うように走るシーンで現わされている。
第六章「性(或いはセックス)」(1850年)
彼女はようやく愛情を抱く相手に出会うが、
ol9.jpg

彼の自由な生き方を束縛せず、旅立たせる。

さらに時代は下って第一次世界大戦か第二次世界大戦らしきときには
寝間着一つだけで逃げ惑っている。
水溜りにすべり泥だらけになったオルランドは身ごもっている。

最終章「誕生」は現代のロンドン。
皮のライダースーツを身に纏い、サイドカーに娘を乗せて走るオルランド。
ol10.jpg

彼女は自伝を書き、経済的に成功して自立している。
「女は男より能力が低く、結婚によって価値を与えられる」とした時代は去った。
かつて住んでいた屋敷は白い布で覆われている。
過去は白紙になった。
ここで、おそらくエリザベス女王の言葉は効力を失ったのだろう。

スクリーンから観客に向かってオルランドが何度も視線を投げかける。
「そうだろうか?」
「こういうことなんだけど」「どう?」
「これが私だ」

無言であって無言でない。
その視線は雄弁で、時にはちょっとしたウィットが含まれていたりする。
これで観客は、オルランドと対話しながら長い来し方と伴走することになる。

おとぎ話。寓話。伝記。どれでもあってどれでもない。
主演のティルダ・スウィントンは本当に不思議な風貌で、この映画にぴったり。
性どころか、時間をも超越している。

エンディングに流れる曲がたいへん良いです。
ORLANDO 1992. "COMING" JIMMY SOMERVILLE

オルランド 特別版 [DVD]オルランド 特別版 [DVD]
(2002/08/23)
ティルダ・スウィントン、クウェンティン・クリスプ 他

商品詳細を見る


オーランドー (ちくま文庫)オーランドー (ちくま文庫)
(1998/10)
ヴァージニア ウルフ

商品詳細を見る


今日のプラスワン

「オルランド」でエリザベス一世を演じているのは、クエンティン・スクリプ。
イギリスの作家・イラストレーター・俳優で、1999年に亡くなりました。

エリザベス一世は、女王という仕事上、結婚が全く私的なものではなく、完全に政治的なものと悟っていたため、
国政を危うくするくらいなら結婚しないのが得策で
結婚を保留しておけば各国との交渉手段に使えると考えていたのかもしれません。
個人的な女の幸福を犠牲にしたのか
骨の髄まで政治家だったのか
今となっては分かりませんが、たいへん興味深いところです。
同時代のスコットランド女王、メアリ・スチュアートが恋に生きて(?)政治的に失敗するのと対照的です。

映画でエリザベス一世を演じたのは、
ベティ・デイビス、1939年「女王エリザベス」
ol12.jpg

グレンダ・ジャクソン、1971年「Mary, Queen of Scots」「Elizabeth R」(イギリス・TVミニシリーズ)
ol13.jpg

ジュディ・ディンチ、1997年「恋に落ちたシェイクスピア」
ol14.jpg

恋におちたシェイクスピア 【Blu-ray ベスト・ライブラリー100】恋におちたシェイクスピア 【Blu-ray ベスト・ライブラリー100】
(2011/06/22)
グウィネス・パルトロウ、ジョセフ・ファインズ 他

商品詳細を見る

ケイト・ブランシェット、1998年「エリザベス」
ol15.jpg

エリザベス 【Blu-ray ベスト・ライブラリー100】エリザベス 【Blu-ray ベスト・ライブラリー100】
(2011/06/22)
ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ 他

商品詳細を見る

ヘレン・ミレン、「エリザベス 愛と陰謀の王宮」(イギリス・チャンネル4・TV映画)
ol16.jpg

エリザベス1世 [DVD]エリザベス1世 [DVD]
(2007/10/24)
ヘレン・ミレン、ジェレミー・アイアンズ 他

商品詳細を見る

アンヌ=マリー・ダフ 2006年「The Virgin Queen」(BBC・TVミニシリーズ)
ol17.jpg

ヴァネッサ・レッドグレイヴ 2011年「もう一人のシェイクスピア」
ol18.jpg

ジョエリー・リチャードソン(ヴァネッサ・レッドグレイヴの娘) 2011年「もう一人のシェイクスピア」
ol19.jpg

もうひとりのシェイクスピア [Blu-ray]もうひとりのシェイクスピア [Blu-ray]
(2013/06/04)
リス・エヴァンス、ヴァネッサ・レッドグレイヴ 他

商品詳細を見る

ワタクシはケイト・ブランシェットのエリザベス一世がお気に入りです。
演技的にはジュディ・ディンチすげえ!と一目置かざるを得ません…はい…。
ちなみにケイトとジュディは、「あるスキャンダルの覚え書き」で競演してて。まぁ、こっちも凄かったです。
ジュディ怖いよ!
あるスキャンダルの覚え書き [Blu-ray]あるスキャンダルの覚え書き [Blu-ray]
(2014/02/05)
ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット 他

商品詳細を見る


(元記事は2013年4月3日に書かれました)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。