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「銀河鉄道の夜」1985年日本アニメ

前回の「源氏物語」に引き続き、杉井ギサブロー監督作品「銀河鉄道の夜」について語ろう。
言わずと知れた宮沢賢治の深淵な世界を
漫画家ますむらひろしの原案と猫キャラクターを使って描いた映画だ。
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正直に申し上げて、ワタクシは宮沢賢治の世界が怖い人間でした。
高校生までは「なんて美しい造語を編み出すのだろう」と、詩集を読んでは気に入った語句を拾ったものでしたが、
ある時から恐ろしくなってしまいました。

「引き込まれたら戻ってこれないかも知れない」

賢治を読み進めると、時々足元に真っ黒な穴が現れて、
それを知らずに踏むとあの世にいってしまうような感覚がしたものです。

この映画をレンタルして見れたのは、横に妹(彼女は宮沢賢治大好き乙女でした)が、いたからです。
そして、猫キャラクターでなければ、やはり見られなかったでしょう。

映画はまさに童話の世界のように、外国の挿絵を思わせ、
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ジョバンニの不安や緊張感、
ささやかな強がりが時にはヒリッと、あるいはジワリと伝わってきます。
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それが、妙に目を離せないフィルムになっていて、先に地雷があるのを分かっていながら
進んでしまうような感覚です。
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銀河鉄道が進む音が恐ろしい。
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カンパネルラの「ザネリもずいぶん走ったけど追いつかなかった」「僕、水筒を忘れてきた」あたりのセリフが恐ろしい。
「お母さんは僕を許して下さるだろうか」のセリフが恐ろしい。
彼が語る「本当のしあわせ」が心をえぐる。
此岸と彼岸の間でこれを問われて、ワタクシはとてもつらい。
泣きたくなる。
賢治の言わんとするところはダイレクトに魂を直撃し、丸裸にする感じがして、つらい。

人間は、本来しあわせを求める生き物だ。
しかし「本当の」がつくことで、しあわせの本質を問われても、すぐに答えが出ない。出せるものでもない。
「本当のしあわせ」はカンパネルラも我々もはっきりと分からないものだ。

映画はそれを置いといて、無言のシーンが続く。
北十字が鮮やかに青く輝き、厳かな音楽が流れる。
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此岸と彼岸の間の世界に住まう人、彼らは幽霊なのか、幻影なのか。
ブリオシン海岸も鳥追い男も盲目の技師も、讃美歌306番を教える老婆も、なぜそこにいるのか理由は定かでないが、いるのだ。

銀河鉄道の乗客ではっきりと死者である幼い姉弟とその家庭教師の部分は一番劇的だ。
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タイタニック号の事故をモチーフとしているだけに生々しい一方で
「本当のしあわせ」の正体に触れるシーンだ。

我々は生きているのではない。生かされている。
何のために生かされているか分かった時が「本当のしあわせ」に至る道だと。
それは時に悲しみを生むと分かっていても。

新世界交響楽、サソリの火、南十字と、「本当のしあわせ」に触れた者たちのシーンは穏やかに悲しい。

悲しみに会うことを恐れるのは人間の本能だろうか。
車内に二人きりになったジョバンニとカンパネルラは繰り返し言う。「僕たちはどこまでも一緒に行こう。」
そう言いながら、カンパネルラは逝ってしまうのだ。

目覚めて、カンパネルラに起こった出来事を知ったジョバンニは彼の心を受け取った。
最後に一緒に旅をした「しあわせ」がジョバンニにはあったので、悲しみが訪れても、彼は走ることができた。
この時、初めて猫キャラクターの正面あおりのレイアウトが登場する。
それは驚くほどに力強い構図だった。
 
エンディングに賢治の「春と修羅」の序の一部が朗読される。
「わたくしといふ現象は 假定された有機交流電燈の ひとつの青い照明です」

そう、青い。ジョバンニは青い猫であり、穏やかな悲しみの色をしてるのだ。




今回のプラスワン

若い時に、妹と見ながら二人して「これ、怖いね」と言ったのは、鳥追い男が叫びながら倒れるシーン
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そいてタイタニックとともに沈んだ家庭教師の独白でした。
そこには、何か、この世で見てはいけないものの気配があったからです。

賢治の世界には、たびたびユーモラスでありながら壮大で透明なイメージが現れて
時には、ワタクシが恐怖を感じる彼岸への入り口が見え隠れしていました。

そんなわけで、数年前まで賢治関連の本を開けなかったのですが、
ある時ネット上で知り合った方が東北へ旅行したおり、宮沢賢治記念館で撮った写真を公開してくださり、
ワタクシの賢治に対するイメージが180度ひっくり返りました。

それは、彼の直筆原稿の写真でした。
「ええええっ!!これは、いわゆる変体少女文字ではッッッ!!」と咄嗟に思うくらい、
すらっ!
くねっ!まるまるっ!ずらずらっ!

「うっわー!賢治の哲学的なんたらかんたらの世界が雪崩をうって崩壊!」

ビジュアルがたいへん重要な役割を果たすと、改めて身に染みた瞬間でした。
おかげさまで、現在、ワタクシの本棚には「春と修羅」が無事に収まっています。

余談ですが、ますむらひろし氏のデビュー作「霧にむせぶ夜」も、
ユーモラスでありながら、そうとう怖い漫画です!

(元記事は2013年10月9日に書かれました ・エントリー279 )
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