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「ロバと王女」1970年フランス製作

この映画、コテコテと見るか、スタイリッシュと見るか。
おフランス特有のエスプリ(なにそれ、おいしい?)を効かせたおとぎ話が意外にも直球勝負であなたを襲う。

原作シャルル・ペローの「ロバの皮」
お妃を亡くした王様が自分の娘に求婚を迫り、娘は仙女の知恵を借りて無理難題を父王に出したあげく、ロバの皮を被って逃亡。
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ある王子に自分を発見させるよう仕組んで、めでたしめでたしという、おとぎ話です。

なーんだ、おとぎ話かー、などと油断してはいけません。何しろ製作者はフランス人です。
このシーンだけで、一目瞭然。


天真爛漫に極彩色、わざとチープに手の込んだ美術を駆使し、
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大人の都合を父王と仙女にふりかけ、ミュージカル仕立てにして、(仙女が「親子で結婚してはいけません」と歌うのが妙にツボ )
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アンニュイな恋のテーマが絶えず変奏曲のように流れ、トドメはおとぎ話そのものが持つ力にぐいぐい引き込まれるかと思えば、唐無稽な現代文明の産物インサート↓に開いた口がふさがらない。
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やってくれます、フランス人。

撮影当時、27歳のカトリーヌ・ドヌーヴが美しい。
美しいが、恋も知らない年頃の王女にしては大人の美しさだ。
だが、その違和感など、なんのその。ロバの頭付き毛皮を被って走る、その走り方はまさに王族の走り方。庶民のように踵を土につけません。つま先から着地するのです(実はバレエの歩き方・走り方がそうです。)

それはともかく、ドレス、すごいわっ!
父王を困らせるために仙女の入知恵で作らせた空のドレス(なんと青空に雲が走る動画ドレス)
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月のドレス
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太陽のドレス
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父王も負けていない変な衣装と変な玉座
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ああっ、デジタルリマスター版で観ると、クラクラしますことよ、奥さんっ!

監督ジャック・ドゥミ、撮影が楽しかったでしょう。楽しくて仕方なかったでしょう。遊び心満載だもの。
ワタクシのような庶民には到底思いつかない豪華ドレスでお菓子を作る王女のシーン。


凄すぎるッ、フランス人!

ここまで来たら諦めて(何を?)、この世界にどっぷり浸るしかありません。降参です(何に?)。

王子との「うふふっ私をつかまえて~」「アハハッ待てよ、この~」を経て
(この時の歌詞がまた率直!
『禁じられたことをしましょう。二人でお酒を飲んで、隠れてタバコを吸って、お菓子をむさぼりましょう。
 たくさん子供を作りましょう。二人で生きましょう。』 まさに人生の喜びを謳歌するフランス人ッ!)
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ラストのハッピーエンドまで
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甘くて仕方のないケーキを戴くように堪能するに限ります。
ほら、もう、あなたの頭には「ラ・ム~ル♪ラ・ム~ル♪」のメロディしか聞こえなくなっているでしょう。合掌。


今回のプラスワン

20年ほど前に「本当は恐ろしいグリム童話」とその類本が山のように出た時期がありました。
ワタクシの子供時代は約40年より向こう側ですから、不適切な表現に配慮したモノの方が少なかったのは事実で、
「はだしのゲン」を震えながらもしっかり読めたものでした。
そんな時代ですから、当然残酷なままの童話本・昔話本が残っていたわけです。

シンデレラの継母達が鳩に目を潰されたとか、焼ける鉄板の上で踊らされたとか、
結婚を許してもらうために広大な田んぼの田植を一人でやってのけた娘が日の入りとともに倒れて死ぬ話とか、
残酷と悲惨がまかり通る世界。

それは子供のうちに、若いうちに、何が正道で何が非道なのかを知る手立てでありました。
人の内に慈悲と残酷が、同等に宿り得ることを知る手立てでありました。
世の中に理不尽と幸運が入り乱れるさまを知る手立てでありました。

そんなのは成長してから知ればよいと?
駄目です。
お年寄りになると体力が落ちて知るには遅すぎるし、ショックも大きい。
だから早いうちに耳から目からでも入れておきなさい、ということです。

この映画の父王、
派手な色彩に隠れがちですが、近親相姦も辞さないという面構えしているのが怖いですね。

グリム童話の「千匹皮」のように娘と結婚する結末もあったのでは?
赤ずきんちゃんも本来はオオカミに喰われておしまい、なのです。合掌。

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(元記事は2013年8月26日に書かれました・エントリー726)
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「血とバラ」1960年フランス・イタリア合作

一応、吸血鬼映画なので恐怖映画枠に入れようかと思案しましたが、どーみても恐怖映画ではありません

むしろ時を越えた恋物語という印象。

だってねぇ…時代は第2次世界大戦後、立派に大型旅客用飛行機が飛んでるシーンから始まるのですよ。
現代風ゴシックと位置づけるにしても、けだるい映像とけだるい展開はそれほどゴシックでない。
むしろ耽美です
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血まみれシーンを期待してはならない。かわりに幻想的なモノクロシーンが楽しい。

原題「Et mourir de plaisir」あるいは「Blood and Roses」(英語吹き替え用のタイトルかな?)

ローマ郊外の城に婚約中のカップルが居る。
カーンシュタイン家の若い当主レオポルド↓と美しいジョアンナ↓(黒髪の女)。
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婚約記念パーティに花火を打ち上げるため花火師が呼ばれている。
彼が提案したのは墓地の上の丘一帯を光で染めるというものだった。

その墓地に関しては古い伝説があった。
レオポルドの従妹、カミーラ↓や招待した医師達を交えて伝説を語り合う。
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それによると、カーンシュタイン家は吸血一族で、1759年に血を吸われるのに反抗した農民達により、
墓で眠っていたところを一網打尽にされて、吸血を廃業したというものだ。
ただ一人、ミラーカという女だけが難を逃れたという。
ミラーカの肖像画があるが、カミーラは肖像画の主と瓜二つなのだ。

この辺はちょっと不気味ムードが漂って、「いよいよ女吸血鬼の登場か?」と期待したら肩すかしです。

で、いきなり婚約パーティ。
仮装した人々のカオス空間になっています。例の花火が打ちあがり、皆さん大喜び!
ところが、
戦争中にドイツ軍が埋めた地雷が爆発、花火より派手なことになってしまいます。
そのころカミーラはレオポルドへの想いが募り、やけになったのか、肖像画ミラーカと同じ白いドレスを着る↓と、
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あら不思議。
彼女は爆発で封印が解かれたミラーカの棺まで導かれていきます。
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これが実に不思議な絵で、まだ小規模な爆発や花火の噴出中の墓地を白いドレスの女が歩いて行くのです。
監督ロジェ・ヴァディム、
頭のネジが何本か抜けているように思えてなりません(褒め言葉)。

そうして霊魂がどうのこうのモノローグが続いてる最中にミラーカはカミーラの魂を乗っ取ったわけです。
吸血シーンも血の一滴もありません。これが監督の美学なのでしょう。

カミーラの行動がおかしくなり、城の奉公人達は吸血鬼伝説を思い出します。
その中の美少女(女吸血鬼が欲しくなるような可憐さです!)が転落死状態で見つかると、
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マジで吸血鬼の仕業と決めつけて、
10歳くらいの仲良し少女達↓(これがまたかわいい!)はニンニクを首に巻きつける始末。
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さてカミーラになったミラーカは何を狙っているかというと、やっぱりレオポルド。
そのために、今度はジョアンナに乗り移らねばならない。
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ジョアンナの唇に一滴ついた血を接吻で吸い取るなど、
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うっとりな耽美なシーンが続きます。

そして、けだるい展開の中で、いきなり登場するジョアンナの夢のモノクロシーン。
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これは悪夢に近いのに、たいへん美しい。
特に窓の外が水面になっていて、死んだ美少女が誘うようにジョアンナを呼ぶ。
長い廊下に並ぶ女達はこれまでミラーカが手に掛けた女なのか。
最後に現れるトンデモな手術台の上の女。
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それはカミーラの死を暗示している。
そのとおりに、カミーラは墓地に彷徨い出て、爆弾処理の爆発に巻き込まれ、柵の杭に胸を刺して絶命するのだが、
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これまた監督の美学が発揮されて、ちっとも怖くもグロテスクでもない。ひたすら美しい。

そして新婚旅行(?)に出たらしいレオポルドとジョアンナなのだが…、彼女の魂はミラーカであるようだ。
その演出はバラの花が瞬く間に枯れて色褪せるシーンに暗示されている。

これほど血の流れない吸血鬼映画も珍しいだろう。
そして、これほど美しい吸血鬼映画も珍しい。

ワタクシは時々思うのデス。
もしもロジェ・ヴァディムが萩尾望都の「ポーの一族」を映画化していたら…、と。
おそらく展開はもたつくものの、どこを切り取っても「耽美」としかいいようのない映像を撮ること間違いないでしょう。

そんな妄想に浸りながら、けだるいフィルムを楽しむのが、ワタクシの夏のストレス解消なのです。


今回のプラスワン

「吸血処女イレーナ 鮮血のエクスタシー」の監督といい、
本作のロジェ・ヴァディムといい、
欧州には「緩く、けだるく、美しく」まとめて「お耽美」をモットーにしているタイプの監督群があるに違いない。

その最高峰がイタリアのルキノ・ヴィスコンティと思えるのだが、
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彼の場合はお貴族さまゆえか、「退廃、華麗、美しく」であり、たんなる耽美でないところがヴィスコンティ。
しかし、
ヴァディム、大作を撮るわけでもなく、ひたすらキッチュな「バーバレラ」を遺したように
自らの美学を通したのも、さすがと言いたい。
つーか、
美女をとっかえひっかえ自分の映画の主役にして、妻にして、恋人にして、プレイボーイの名を馳せたヴァディムの生涯があっぱれなのだ。

自分の世界に正直に生きたところは、スティーブ・ジョブズと張り合えそうな気がする…。



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(元記事は2013年8月24日に書かれました・エントリー725)

「AKIRA」1988年日本アニメ

乾いた映画だ。


日本の湿気た空気はどこへ行ったのか。強いて言うなら下水がそれだ。汚い汚い汚濁の水路。
あるいは春木屋の地下へ降りる階段にホンの少し。

あとはどこまでも乾いている。
潤いのなさ。
都市も人も渇いている。水に映る夜景の都市さえ、ただの光にすぎない。
渇ききっている。
飢えにも似た感じで、登場人物は全員がほぼ尖がっており、何かと戦っている。

金田たち「健康優良不良少年」の群れは、社会のつまはじき者として、つまはじき者同士でバイクレースを繰り広げ、
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アーミーは抵抗勢力と、
ラボの研究者は常識と、それぞれの立場で戦っている。
そこに潤いはない。
ネオ東京&旧市街はコンクリートの塊。破壊されるのを待っているかのようだ。

バイクのテールランプが尾を引く描写に目を見張りつつ、無慈悲な物語は進む。
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人を人として扱わない物語。
どこかの国のようじゃないか。どこかの国民の心象のようじゃないか。
1980年代に大友克洋はすでにそう感じていたに違いない。
醜いものは醜いままに。
美しくないものは美しくないままに。
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そう描くしかない。
それは絶望に似ている。
そうでなければ、現実しか見てはならないと、大友克洋の刃が突きつけられるかのようだ。

超能力開発のために薬漬けにされた3人の実験体。
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子供の体格のまま、
老人の皮膚となり、
老人の達観を身につけた。
その仲間入りをするはずだった鉄雄は
ずば抜けた超能力者として覚醒するが、
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そのパワーは破壊の方向に向けられる。

自分でコントロール出来なくなったパワーはガールフレンドのカオリを殺す。
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鉄雄の兄貴分だった金田は鉄雄を止めようとするが…。
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圧倒的な渇きと破壊の映像を前にすると、言葉が出ない。
わずかに金田と鉄雄の切れそうで切れないつながりが救いなのか、無常なのか。
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誰にも、どこにも、感情移入できないまま、観た。

社会人になっていた学生時代の友人達と連れだって観に行った。
誰もが黙りこくって
劇場をあとにした。
衝撃以外の何物でもなかった。
下手に口を開くと台無しになるような気がした。
それくらい咀嚼に時間と体力が必要だったのだ。

あの頃、「AKIRA」はオタクの教養であり、通過儀礼だったのかもしれない。
劇場で芸能山城組の大音響に身を浸し、
めくるめく映像に哲学を見出す試練を経て、
ジャパニメーションの黎明に立ち会ったのを矜持としたのか。

ちなみに、まったくオタク資質のないワタクシの妹は婚約者と一緒に観に行って
帰りに黒ビールを飲んで
具合が悪くなったらしい。
薦めたワタクシが間違っていた。

許せ、妹よ!


今回のプラスワン


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この画像は、映画の冒頭、春木屋に置いてあるジュークボックス。
金田がこれをいじっているところに
山形が来て、
抗争相手のチームを叩きのめしに行くシーンに続く。

CDが並んでいるあたり、ちょうど音楽媒体の変わり目だったと思い出す。
ラジカセに代わって
CDラジカセが売り出され、
レコードにない臨場感を売りにしたCDの音が話題になっていた。

妹が給料を貯めて、
大きなCDラジカセとクラシック名演集20枚セットを買ったのには驚いた。
Victor RC-X750だったような…。

「AKIRA」のサントラ、芸能山城組のBGMはCDで発売された。
それを買って妹のCDラジカセでカセットテープに移し、
カーステレオでよく聞いた。
ワタクシ自身のCDプレーヤーは結婚するまで持たなかったのだ。


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(元記事は2013年8月21日に書かれました・エントリー724)
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