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「獄門島」1977年横溝映画

前年に「犬神家の一族」さらに「悪魔の手毬唄」でメガホンを取った市川昆監督の
横溝正史・金田一耕介映画第3弾、「獄門島」

とても爽やかなテーマ曲(作曲・田辺信一)


おそらく横溝映画で一番好きです。
夏!海!島!瀬戸内海の潮風!豪華俳優陣と華やかなカメラワークで魅せる娯楽性。
そして!
なんといっても強烈なのが、鬼頭三姉妹!ワタクシにとっては「獄門島」=「三姉妹」なのです!
雪月花。
「どこか尋常でない三輪の狂い咲き」月代・雪枝・花子。
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特に汚さ全開の月代は浅野ゆう子。当時17歳。目を見張るイカレっぷり。
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10年後にW(ダブル)浅野と呼ばれ、バブル期にボディコンの象徴的存在になろうとは、この時誰が予想しえただろうか。

三姉妹は殺され、その命と体で俳句の世界を見立てることになる。
実はそれは供物なのだ。
振袖を着た供物…なんという甘美で怪奇な響きだろう。

花子は逆さづり!
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雪枝は寺の釣鐘に押し込められ(転がり出たあとがまたひどいことに…)
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月代(白拍子=遊女という解釈で)
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素敵だ!素敵すぎる…さすが市川昆だ…。
おぞましい殺人がこれほどあでやかな舞台の一場面になるとは。
三姉妹の母・旅芸人&祈祷師のお小夜(故人)の仇花的な美しさをほうふつとさせる。(演じるは草笛光子)
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そしてバランスをしっかり取るのも市川監督。
三姉妹の従姉にして、男手(網元・鬼頭嘉右兵衛=故人、嘉兵衛の息子・与三松=廃人、与三松の息子・千万太=故人)のない家を采配する早苗。
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しっかり者で凛とした美しさはまさに正統派だ。女優・大原麗子は名の通り、麗しい。
三姉妹の毒気を引き立てつつ、きれいに中和もしてくれる。
さらに、鬼頭家使用人・勝野(司葉子)の楚々とした姿、
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床屋の娘・お七(坂口良子)の可憐さが際立つ。
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瀬戸内海の小さな島、獄門島。
海の解放感と美しい風景に酔いながらも、網元と寺が警察より力をもつ封建的な世界に足を踏み入れる金田一耕介と観客達。
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終戦後、復員兵の姿が珍しくない頃、
金田一耕介は復員の途中で死んだ鬼頭千万太の遺した言葉のために島に来た。
「自分が帰らないと三人の妹が殺される。」
三人の妹とは例の三姉妹だ。千万太とは腹違いなんだけど。
千万太と金田一耕介(石坂浩二)の予感のとおり、三姉妹は殺されてしまいます。

その裏には鬼頭家の因縁極まる過去があるわけですが、
それがまた古典的で、渦中にある者は修羅であり、渦の外から見る者の哀れを誘う。
しかし、それ以上にワタクシ、逆さづりの強烈さが目に焼き付いて、
猟奇的禍々しさに痺れてしまうのでした。

その前には多彩な男優陣も霞むほどです。なんと贅沢でもったいないことでしょう。ワタクシ、罰当たりです。

千光寺の和尚・了然(なんと佐分利信!渋い、渋すぎる!)の懊悩を隠した姿。
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鬼頭家を陰で支える潮つくりの竹蔵(ウルトラマンのムラマツ隊長、小林昭二)の頼もしい姿。
人のいい清水巡査(上条恒彦)。
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鬼頭分家の巴(太知喜和子)のやっかいになっている鵜飼さん(ピーター)。
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それ以外にも常連の加藤武や三木のり平が楽しく顔をならべているというのに!
もう一度書いておこう。ワタクシ、罰当たりです。

それはさておき、瀬戸内海をこんなに美しく撮ってくれたスタッフに頭が下がります。
徳島の北部は山を越えるとすぐに瀬戸内に出られます。
子供の頃、何度か行楽に行った海は懐かしく、そんな気持ちも重なって、この映画を気に入っているのかもしれません。

そして、かなり後になって。このシーンに、あっと声を上げそうになりました。
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三姉妹の棺に掛ける振袖を選ぶ早苗と勝野。
美しい衣装を広げるシーンは1983年の「細雪」にもあり、そこではさらにグレードアップした演出がなされているのです。
なるほど。
市川監督がこのシーンで狙ったことが受け継がれていたのです。

(なぜか予告編貼るのを忘れていたので、大急ぎで貼っておく)


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横溝作品のコミカライズはいくつかありますが、
中でもささやななえの「獄門島」「百日紅の木の下で」は最も原作のムードを濃く感じられる傑作ではないでしょうか。
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ちょうど連載時に読んだワタクシ、いっぺんに魅せられてしまいました。
「ああっ!こんな世界があるなんてっ!」
これが本格的にミステリーに入るきっかけとなりました。

ささやななえ(現・ささやななえこ)の絵柄は少女漫画の繊細さと
どこか土俗的な独特の描線が混在していて
美しさと同時に、キャラクターの卑俗やどうしようもなさが揺らめき立つ。
ご本人は花子の逆さづりを描くために
鏡を前にして逆さになってみた、と後でレポート漫画で描いていたが、
たいそう楽しんで(=苦しんで)描かれたことは漫画からしみじみと伝わってくる。

確かコミックスを持っていたはずですが、どこへ行ってしまったのか…。
金田一さん、教えて下さいよー。
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「犬神家の一族」1976年角川映画


2012年、ダイハツ・ミライースCMの音楽に「ピクピクッ!」と反応した方が、果たして日本に2000万人はいたのではないかと憶測を呼ぶあの曲…、そう…「犬神家の一族」愛のバラード、作曲は大野雄二である。

2006年にリメイクされ、新たにこのミステリ映画の名作を知る人が増えたことだろう。
しかし、オリジナルを超えることは映画にとっても難しい技であることに変わりない。

やはりここは1976年の昭和どまんなかの方を観てみよう。
説明するのもヤボな話ゆえ、ちょっとだけ映像の力をお借りしよう↓


予告編だけで、もうたまらない。映画として、あるいはミステリとして、最高に扇情的だ。
そして美しいと感じるのは、さすが監督・市川昆のこだわりを随所に見るからだろう。

製薬財閥・犬神家の当主、犬神佐兵衛の遺言によって
莫大な遺産と事業の行方を左右することになる美女・野々宮珠世。
佐兵衛の恩人の末裔である珠世と、彼女を巡る犬神家の複雑な人間模様。

重厚で華麗。
例えば、遺言開封の日には、弁護士の古舘は正装でのぞみ、金箔の襖がめぐらされた大広間(照明は美しいシェード付き)に、犬神佐兵衛の血縁者のみ紋付の礼装で集まる一族たち。
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佐兵衛がその時々の妾に生ませた(=母親の違う)三人姉妹とその息子、そして珠世だけが紋付で
三人姉妹の夫などは普通に背広。つまり血縁ではないと、示している。
ここで、珠世が紋付を着ているのには意味があるのだが、それはあとになって分かる仕掛けだ。

このように些細な仕掛けを張り巡らし、映像美へと集約させているのが市川監督だ。

回想シーンにはモノクロからさらに特殊効果を重ねた映像が数種類使われ、
若き日の三姉妹による青沼母子襲撃シーンなどは、おぞましい惨劇をたいへん印象的な様式美で撮っている。

2時間30分という長さにもかかわらず、一切のたるみがない。
次々と起こる見立て殺人と謎解きと隠された過去がスリリングに展開する。
それを支える俳優がこれまた達者なメンバーだ。
石坂浩二、坂口良子(女中の演技が可愛くてたまらん)
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高峰三枝子(犬神家長女の迫力が凄すぎる)スケキヨの母である。
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三国連太郎(布団で寝てるのと遺影だけなのに、凄い存在感)
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島田陽子(まさに何を考えているか分からないくらい謎めいている野々宮珠世)
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草笛光子、三條美紀、あおい輝彦、三木のり平、加藤武(よし!わかった!)寺田稔、などなど、画面がピシッと引きしまる。

「犬神家の一族」のおもしろさの一つは時代背景と血のつながりにあると思う。
日本が明治・大正期を経て近代国家へと変貌する中で隆盛したものが、敗戦によって変わろうとしている時代だ。
それを喪失とするか、再生とするかは、人の立場によりけりだが、
少なくとも日本人が置き去りにしたものの、忘れられない何かを突きつけるミステリーだ。
横溝正史の代表作にはそうしたものが多い。
そして、「一族」は当時流行語になった。日本人にとって血縁とは侮れないもののようだ。
この映画に限ってネタバレしたくないが、野々宮珠世が紋付を着ているのも、この血縁がなせるわざなのだ。

故人・佐兵衛にがんじがらめにされた世界が惨劇の末に解放される。
金田一耕介が列車に飛び乗るラストシーンに、事件の関係者は誰もいない。
彼とともに事件を目撃した観客は、明るい余韻とともに劇場を去ることができる。

そう…犬神家を象徴するシーンを思い出すこともなく…↓
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(でも、思い出すと今度は笑ってしまうかもしれないですね。)

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この映画で高峰三枝子の堂々たる年輪&風格に驚いたワタクシですが、
ワタクシの母が戦後間もない女子中学生だった頃、
「朱と緑」に主演していた若き高峰三枝子↓を観て
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母親(ワタクシの母方の祖母)に「この世にあんな綺麗な人がいるなんて信じられないッッ!」と絶叫すると
祖母はふふふと笑って、「そりゃあ高峰三枝子だものねぇ」と余裕しゃくしゃくで応えたとか。

それはともかく横溝正史の文は読みやすく、「犬神家の一族」文庫版は一晩で読んでしまった。

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行間からにじみ出る日本独特の湿り気、
村落共同体とそこからはみ出た者たち、
分限者と呼ばれた権力者や富裕者、
移りゆく力関係、戦争の名残り、
そうした社会構造を背景に、欲望と因習に絡め取られた悲劇は、一転して娯楽になった。
そして、ノスタルジィの対象になるほど、戦後が遠くなっいたのが、1976年。
すでに平成25年であり、敗戦の年から70年近くになる今、映画「犬神家の一族」は果てしなくノスタルジックな美学だ。

一応2006年のリメイク版も観たが、やはり時代は変わってしまった感がある。
松嶋菜々子さんは平成の顔と体を持っている。

当時耐震工事をしていた我が家に足しげく来てくれた工務店のT現場監督と、
お年を召した石坂浩二さんの目がそっくりで、
映画を楽しみにいったはずなのに、金田一耕介がアップになるたびに「ああっ!あなたはT現場監督ッッ!!」と工事のことを思い出してしまい、映画を全然楽しめなかったという…。

T監督ッ、1000円返して下さいっ!

(元記事は2013年6月7日に書かれました・エントリー714)

「フランティック」1988年アメリカ製作

前回取り上げた「シャレード」がパリを舞台にしたロマンティック・サスペンスなら
今回の「フランティック」はパリを舞台にしたシリアス・サスペンスと言えるでしょう。
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監督はパリ生まれで1987年にフランスの市民権を得たロマン・ポランスキーだけあって
全然観光向けでないパリのもう一つの顔を撮りまくっている。そこがたまらなくいい!

アメリカから学会出席のためパリに来た外科医リチャード・ウォーカー(ハリソン・フォード)。
彼の語学力は挨拶程度の仏語。妻のサンドラは仏語ペラペラ。
新婚旅行以来のパリ旅行にちょっと浮き浮きのはずなのに、
夜明けのシャルル・ド・ゴール空港からパリに向かうタクシーはパンクで立ち往生。
黒人の運転手が代替えのタクシーを呼べば、犬が同乗してて朝の大渋滞に巻き込まれる。
早朝のパリの朝をゴミ収集車が轟音を立てていく。

しょっぱなから観光向けではありません。

外科医がシャワーを浴びている間にホテルから忽然と消えた妻。
言葉の壁と融通の利かない慣習の壁に翻弄される外科医。もはや学会どころではない。
妻を探して孤立無援の三千里。

この映画、字幕は英語の部分だけに付き、仏語はまったく分からないようになっています。
それゆえ観客も外科医と同じ気分を味わうことができます。(仏語に堪能な観客でもイライラするかもしれませんが)
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なにしろ妻がホテルを出た時、男が一緒だったというだけで、
ホテルの従業員も、パリ警察も、アメリカ大使館の職員も
「奥さんはパリに恋人がいたのです。え?ご存じなかった?」と言わんばかりの態度。
旦那としては二重にツラいです。
捜査の見通しはまったくないうえに、超誤解。さすがは間違った方向にamourの都、パリ。

武器密輸の運び屋をしたフランス人女性・ミシェル↓がサンドラのカバンを空港で取り違えたために
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サンドラが中東マフィアに誘拐されちゃったのですが、
ホテルの向かいの花屋で妻の写真を取り出して、英語で「探しているんだ」と言えば、
プレゼントだと勘違いした店員は花を選び始めるし、
隣のカフェでは店主は英語が全然ダメで、ギャルソンが通訳。
ちょっと怪しい常連客が誘拐現場を教えてくれるが、情報料をせびりまくるという図々しさ。

で、警察に行けば書類を揃えるのに一週間かかるところを特別にやってるんだぜと凄まれ、
アメリカ大使館では行列に並んだあげく、何の力にもなれませんと一蹴させる始末。

ハリソン・フォードの困ったお顔がいよいよ険しくなっていきます。
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打つ手がなくなった彼は取り違えたカバンをこじ開けます。
ここからが本領発揮だ、ハリソン・フォード!と期待しても、インディ・ジョーンズではないので、とにかく困り果てた中年男がパリをうろうろするばかりです。
唯一の手がかりは、バー「青鸚鵡」のマッチ箱に書かれたデデなる男とその電話番号。
「青鸚鵡」で麻薬の売人に大枚はたいてデデの住所を聞き出すが、
デデはすでに殺されていましたッ!
デデの留守番電話のテープをホテルへ持って帰って翻訳してもらい、やっとミシェルと出会うものの、
マフィアの手が回ってきます。おっかねー。
肝心のブツはお土産サイズの自由の女神像の中。
それが屋根を滑り落ちたりして、パリの空の下、屋根裏の窓から決死の拾い物をする外科医とミシェル。
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果たして、サンドラは無事なのか。
アメリカ大使館はこの事情を利用しようと画策するし、中東マフィアに狙われた外科医とミシェルの命はどうなる。

このミシェル、素性は麻薬の運び屋という以外は謎の女。いでたちは常に皮ジャンでゴシックで厚化粧。
外科医と協力するのも運び屋の報酬のためかと思いきや、情に厚いところを見せたりして
かわいい女でもあって、実はそこが好きです。
可哀そうなことに彼女はラストの銃撃戦で死んでしまいます。
「独りにしないで」と言って絶命するのですが、本当の彼女の心をかいま見たようです。
ああ~、こんな魅力的な女を殺すなんて!もったいないッ!
 
再びゴミ収集車が出動中のパリ。
外科医と妻はタクシーの中でつらかった数日を慰めるように抱擁します。
日暮れを迎え、パンテオン広場の西、スフロ通りからの長いエッフェル塔の俯瞰ショットが美しくもやるせないエンディングでした。

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さて観光向けでないパリと言いつつ、名所を象徴的に取り込んだポランスキー監督。

たとえば外科医のホテルの部屋からは、芸術の殿堂パリ・オペラ座が真正面に見えます。すばらしい眺めです。
しかし、芸術とは狂気や美醜の紙一重をも含むもの。
誰が言ったか「きれいはきたない きたないはきれい」

そして、密輸に使われた自由の女神像。
ニューヨークのリバティ島の自由の女神はアメリカ独立100周年記念にフランスから贈られたものです。
その返礼として、今度はパリ在住のアメリカ人が、フランス革命100周年記念に自由の女神像を贈りました。
セーヌ川のグルネル橋のたもとに立っています。
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なぜポランスキー監督はこの像を密輸の道具に使ったのでしょう。
ユダヤ系ポーランド人としてパリに生まれた彼は、ナチス・ドイツのために凄惨な青春を過ごし、
のちにユダヤ人が自由に活動できると信じて移り住んだアメリカで悲劇に見舞われます。
そしてアメリカには二度と入国できなくなっています。
自由を求めたけれど、それは幻想だったというわけでしょうか。

ホテルの気が利く接客係のガイヤール(良い人!)が通うジムは、サン=マルタン門が見えるフォーブール・サン=マルタン通り。
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中小の商店が並ぶ庶民中の庶民の街です。
ミシェルがかくまってもらう友人の家はセーヌ河に浮かぶボートハウス。
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殺されたデデのアパルトマンも私道の奥まったところ。市井の人々の生活感があふれる舞台です。

ワタクシ、観光も好きですが、地元の生活にも興味があるせいか、まことに見どころでいっぱいの映画でした。
この傾向のため、欧州旅行のお土産に、生活雑貨(紅茶の茶こしとか、調理器具とか、カフェオレボウルとか、ノートとか)を買って、家人に「変なものばかり買って来た」と言われたのでありました。
雑貨専門バイヤーになって、雑貨店経営すればよかったかも。


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(元記事は2013年6月2日に書かれました・エントリー713)

「シャレード」1963年アメリカ製作

最近になってデジタルリマスター版で観なおしました。
冒頭の列車のシーンが暗いものですから、デジタル補正ではっきり見えると目がラクでした。
この先は超高齢化社会です。
懐かし映画は不自然でないくらいにデジタル補正をかけてくれると、お年寄りに喜ばれるでしょう。

さてもこの映画、企画の段階でノリノリだったことでしょう。
「ヒロインは人妻!しかも未亡人!彼女を狙う悪者面の男達!謎が謎を呼ぶサスペンス!
アクション!ロマンス!シャレた会話を散りばめたコメディ仕様!
舞台は…そうだ、花の都パリはどうだ?
観光名所をロケするんだ!
それならヒロインのオードリー・ヘプバーンにパリの最新モードを着せよう!ウホッ!」

景気のいいオープニング


機何学的なアニメーションのタイトルデザインはモーリス・ビンダー。音楽はヘンリー・マンシーニ。
もはやアートでございます。
ところが!いきなり冬山リゾートから始まるヒロインの最新モード。
ジバンシィの衣装が今見るとおかしすぎるのです。なんというか…SFチック…?もはや超アート…?

冒頭の冬山リゾートで着ているオールインワンタイツに毛皮の上着&ニット帽子、でかいサングラス。
これが当時の最先端…。
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ううう、時代が三回りくらいしてダサく見えてしまうのはワタクシがおかしいのでしょう。
このあともオードリーの衣装だけが、浮いて浮いて浮きまくりな感じで
決して古くはないのに、時代のズレを感じてしまう(涙)ああ、ごめんなさい!
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「ああ、もうこれはオードリー御用達ということで片付けよう!」とむりやり定義し、なんとか落ち着くありさま。
最先端ってムズカシイ。取扱い要注意です。

それはさておき、個性的な俳優陣と死人が出てもあくまでシャレたサスペンス・コメディ、
半世紀前のパリを観光する気分で軽く楽しめるのがいいところです。
殺された夫がどこかへ隠した25万ドルをめぐって、脅迫されたり騙されたりする未亡人。
果たして彼女の運命は?

未亡人役のオードリー
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彼女を助けるケーリー・グラント(ちょっと老けすぎてないか?)
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謎の3人組はジェームズ・コバーン
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ジョージ・ケネディ
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ネッド・グラス
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米大使館のウォルター・マッソー
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もうアクの強い輩ばかりでオードリーの可憐さが際立つ仕掛けになっているとしか思えない。
個人的にはジェームズ・コバーンの悪役ぶりが好きです。けっこう仕立てのいいスーツ着ているなぁ。

あと、個人的にすごく気になるシーン。冬山リゾートでなぜかプール。
室内プールとはいえ、開放ドアがあったりしてたぶん冷たいのじゃないかな。
毛皮の上着姿のオードリーの背後のガラス越しに水着の人がたくさんいて

「何なんだ、この風景はっ!」  欧州のリゾートってこういうものなの…?

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花の都パリ!
とはいうものの、実際のパリは路上にゴミと犬の落し物と家のない人々と少女スリ&詐欺集団がいるし
芸術的な光景と猥雑さが入り混じり、水と安全は買わねばならない都です。
ブランド店の紙袋持って歩いていると狙われます。
すぐに風呂敷に包むか、エコバッグに放り込むか、タクシーでホテルへ帰りましょう。

それはともかく「シャレード」の中のパリの名所を数えてみた。

シャンゼリゼ公園(シャンゼリゼ大通りの両側に展開する広大な森のような公園)
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ノートルダム寺院(言わずと知れた観光名所中の名所)
世界遺産・セーヌ河岸(船から見る名所の数々・ただし映画の中では夜景をセットのスクリーンに映したもの)
 ・コンシェルジュリー牢獄(パレ・ド・ジュスティス=裁判所)
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 ・シャンジュ橋
 ・ルーブル美術館
 ・ポン・デ・ザール(芸術橋)
 ・マザラン図書館
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 ・オルセー美術館
 ・パレ・ロワイヤル
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コメディ・フランセーズ
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コンコルド広場(現在は木立が無くなっています。おそらくチュイルリー公園への入り口付近。)
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1985年3月に友人が当てた「ロンドン・ローマ・パリ周遊ご優待券・4名まで有効」にのっかって
アルバイトと貯金をはたいて行った初海外。一番印象深かったのはパリです。
ちょっとエライ目にあったのに、かえって大好きになってしまいました。

ああっ!もう一度パリに行きたいっ!

(元記事は2013年5月29日に書かれました・エントリー712)

「サイコ」1960年アメリカ製作

サイコって言ったらサイコガンダム…い、いえ、何でもありません。忘れて下さい。

サスペンス映画の巨匠、監督アルフレッド・ヒッチコックの作品の中でも王道を行く筋立てと
サイコキラーものの原点として名高い「サイコ」ですが、
実は先月まで未見でした~~~~ッッッ!苦節35年ッ!(←遅い)

名高いだけのことはあります。
定石を積み上げただけでない、極上のサスペンス定食を味わった気分でした。
余は満足じゃ~(←古い)

原題Psycho、意味は口語の「精神病者」

音楽が最初から怖いです。
オープニングもじわじわと地味に追い詰められている気分になります。しかし、ここは上品なヒッチコックの持ち味。
びっくりして椅子から飛び上がるようなことはありません。

なかなかトリッキーなタイトル「サイコ」
精神病者なのは最初ヒロインか?と少々勘違いを起こしていました。

アメリカ西部アリゾナ州の州都フェニックスで長年不動産店で働いてきたマリオンには悩みがあり、
出来心で横領をする。出来心とはいえ、彼女はかなりせっぱつまっていた。
恋人サムとは遠距離恋愛で
しかも恋人は離婚した元妻との金銭的な事情で、なかなか結婚できない。
その日も会社の昼休みに安ホテルで短い逢瀬とくれば、
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イライラして、心にもなく「もう会わない」と言い捨てて会社に戻る。
そこへ4万ドルの現金で家を買う中年男が現れる。
彼女はその4万ドルを銀行に預けるよう頼まれるが、大金を手にした彼女は
「このお金で恋人の金銭問題を解決しよう!」と、札束をバッグにねじ込み、車で町を飛び出します。
マリオンの引きつったお顔が怖くて、こちらまで緊迫感に襲われます!
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焦る心理が犯罪につながったように見えて、彼女がタイトルのサイコなのね、と、まだまだ続く勘違い。

逃走する彼女の心をさらに追い詰める警官・自動車転売店・豪雨。この展開が実にサスペンスフル。
ああ、ヒロインはどうなっちゃうのと、息を飲んでいると
本物の精神病者が登場するのであります。
この本物サイコ青年ノーマンはモーテル経営者。趣味は鳥の剥製作り…。
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最初はいい人に見えるのに、じわじわ怖くなってきます。

そうなると出来心でお金を盗んだマリオンなど可愛いもので、彼女はなんとか平常心を取り戻し、
フェニックスへ戻って罪を償う決心をするのですが、その矢先にノーマンに殺されてしまうのです。
(けっこう叫び声がすごいのでご注意ください↓)

マリオンが浴室で殺されるシーンの音楽。
「キッキッキッキッ」と、まるでガラスを爪で引っ掻くような音です。
TV版「Mr.ビーン」などのコメディドラマで使われているのを聞きましたが、
本家オリジナルは効きました。
これを暗い映画館で観たら相当ショッキングだったでしょう。 
この浴室のシーンがあるから、この映画はモノクロなのだな、と納得しました。
なんでも映画にトイレ&水を流すシーンを入れたのは「サイコ」が初めてだったとか。
今の倫理基準では考えられないほど、昔は奥ゆかしかったのですね。

この青年、実は母親の人格と入れ替わるうえに、青年の人格でも母親の人格でも人殺しをするという難義なヤツ。

マリオンを探しに来た探偵は殺されるし、サムとマリオンの妹も危機一髪の目に会います。
ラストはほとんどホラーです。彼と母親の状況について心理学者が理路整然と語っても
肝心のサイコ青年を治す方法がなさそうでしたから。
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このタイプのラストシーンはずっと受け継がれていて、「羊たちの沈黙」のラストに続いているような気がします。 

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アルフレッド・ヒッチコックと彼の映画については
1970年代に映画雑誌で、すでに映画史の一部のように語られていることも多く
未見ながら情報だけはたっぷりと。

でも、百聞は一見にしかず。観ないことには分からない。
新聞のTV欄をチェックして高校時代にやっと、「引き裂かれたカーテン」「フレンジー」「裏窓」を観ました。
とても印象に残っています。
その後も「ハリーの災難」「北北西に針路を取れ」など。
しかし、「鳥」を観ながら、妹と「コレのどこが怖いの?」と笑ってしまったのは
先に「13日の金曜日」や「エルム街の悪夢」を観てしまったせいでしょう。
時代は加速度をつけて過激になっていたようです。

「サイコ」製作中のヒッチコック御本人を題材にした映画「ヒッチコック」が公開中だそうで、
ワタクシ、またしても観に行けません。
主演が「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンスと知った時はなんだか笑いそうになりました。
いや、ちょっと、ほんと、「サイコ」がおもしろかったので、これは観たいのになぁ…。
(今年後半は強烈にお金も暇もございませんことよ、おーほっほっほ)


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アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン 他

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(元記事は2013年5月17日に書かれました・エントリー711)
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